モノクローム
全く釈然としない。

何故、そんなに手錠にこだわるのか理解出来なかった。
私は後退りするように、彼と距離を取る。



「取りあえずさ、俺が居ない間だけ付けて。あとは自由、それでいいじゃん」



そう言ってテレビを点け、床に寝転がる。

それが今日は自由だ、と気付いたのは暫くあとの事だった。
自由と言っても、携帯を見てるかテレビを観てるかのどちらかで、少しその場を立てば「どこ行くの?」と声を掛けられ、いちいち言わされてしまう。


これの何処が自由なのか。と疑うが、ずっと繋がれてるよりは随分マシだと思った。



その日は午後から手錠を掛けられ、シロは大学へ行くと部屋を後にし、残された私は携帯で音楽を聴きながら放たれる時を待った。

夜になる頃、彼が帰って来て、バイトに行くからと再び部屋を後にする。
そんな彼を見送り、私は用意された食事を口にし、早々にベッドに潜り込んで眠った。


やがて朝が来て、いつの間にか隣にある顔に驚き、またあの爽やかな笑顔で目を覚ます。




「おはよ」

「…おはよう」



そんな日が二日程続き、三日目には繋ぐ時と繋がれない時が分かるようになり、四日目には自ら「トイレに行ってくる」とか「水、飲んでくる」とか報告していた。



そんな風にして、私はシロとの少し変わった生活を始めた。
< 26 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop