モノクローム
「おはよ」


「…おはよう」




東京に行く日の朝。
久しぶりに壁に頭を打ち、あの爽やかな顔で目を覚ました。
彼は昨日の事なんて、すっかり忘れた顔をしている。



胸が痛い…

ずっと、トゲが刺さったみたいに抜けない。


確かめるように訊いてみる。




「ねぇ」


「ん~?」


「東京行って、どうするの?」



彼は一瞬体を強張らせ、それを隠すように「内緒」と言いながらタバコを吸った。
その顔は、やっぱり何か秘めているようだった。

そこに行けば何かが待っている筈。
だけど、[必ず]と言う保証はない。


フリダシに戻る。

頭の中にそんな絵が浮かぶ。
幸も不幸も、全ては彼の意のまま。




最後に笑うのは誰なんだろう…

そんな事を考えながら、彼が用意してくれた着替えを持ち、バスルームへ向かう。
シャワーを浴び、手早く済ませ、洋服に袖を通して脱衣所にある鏡を眺める。

真っ白なワンピース姿の自分から目を逸らすと彼が居た。




「似合うじゃん」



彼の言葉に、また胸が痛む。



「時間でしょ…早く行こう…」




もう、何も考えたくなかった。
早く先を急ぎたかった。

それ以外には方法なんて一つもない…
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