モノクローム
一週間後。

世間はクリスマス一色で誰もが浮かれていた。
夕方のニュースでは、サンタの格好をしてふざけるサラリーマン、着飾った恋人達や幸せそうな家族が映っていた。

そんな中、珍しく夫はテレビに目もくれず、新聞も読まずに食事をしている。
時々、私の顔見ては溜め息を吐き、最後の一口を惜しそうに放り込んで箸を静かに置く。



「ご馳走様」


「…あ…はい」



私はいつもの様子とは違う雰囲気に戸惑いながら後片付けをし、小さなケーキとコーヒーを食卓に置き、椅子に腰を下ろした時だった。



「話しがある」


「…なに?」



「離婚して欲しい」



急にテレビのボリュームが上がったような気がした。



「なに…言ってるの?」


「ごめん。アイツに子供が出来たんだ」


「子供…?」



誰かが悪戯でドラマにチャンネルを合わせたかと思いたかった。
けど、目の前で現実に夫は食卓に頭を着け、「済まない」と繰り返した。



「荷物は後で取りに来る。それまでに…これにサインして置いてくれ…」



そう言って夫は見た事もないコートを着て出て行った。

私は呆然として何も出来なかった。
そこで止まったまま、時間だけが過ぎて行くのを数えていた。
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