モノクローム
それから年が明けて、私は離婚届けにサインをし、正式に[黒川 秋]になった。
「夫婦別姓なんてするから…」
夫の両親は離婚届けを眺めながら呟く。
あの日、クリスマスの日以来、夫とは一度も会っていない。
こんな日も夫にとっては、もはやどうでもいいみたいだった。
「取りあえず…」
義父はそう言うとポケットから封筒を取り出し、テーブルに静かに置いて続ける。
「英二が当面の資金として、50万用意したそうだ。その他、家賃や諸々の費用はそちらが出て行くまで私達が負担する事になった」
「そうですか…」
それはとても事務的で、地方に飛ばされる会社員のような気分だった。
「勝手を言うかもしれないが…なるべく早く済ませて欲しい」
「…分かってます」
「私達ももうすぐ年金に頼るから、きつくて…」
そんな言葉で同情をして、「じゃぁ、要りません」と言える程、自分に余裕はない。
私は二人に深く一礼をして言った。
「すいません。早く仕事を見つけて、ここを出て行きますので…宜しくお願いします…」
無力だった。
誰にも頼れなくて、夫の両親にしか頼れなくて…
だけど、自分にはそうするしかなかった。
「夫婦別姓なんてするから…」
夫の両親は離婚届けを眺めながら呟く。
あの日、クリスマスの日以来、夫とは一度も会っていない。
こんな日も夫にとっては、もはやどうでもいいみたいだった。
「取りあえず…」
義父はそう言うとポケットから封筒を取り出し、テーブルに静かに置いて続ける。
「英二が当面の資金として、50万用意したそうだ。その他、家賃や諸々の費用はそちらが出て行くまで私達が負担する事になった」
「そうですか…」
それはとても事務的で、地方に飛ばされる会社員のような気分だった。
「勝手を言うかもしれないが…なるべく早く済ませて欲しい」
「…分かってます」
「私達ももうすぐ年金に頼るから、きつくて…」
そんな言葉で同情をして、「じゃぁ、要りません」と言える程、自分に余裕はない。
私は二人に深く一礼をして言った。
「すいません。早く仕事を見つけて、ここを出て行きますので…宜しくお願いします…」
無力だった。
誰にも頼れなくて、夫の両親にしか頼れなくて…
だけど、自分にはそうするしかなかった。