モノクローム
何度目の春なんだろ…



いつの間にか数えるのも億劫になって、それでも飽きずに空を見上げてる自分が居る。



「隣、いいですか?」


ふと過ぎる影に視線をずらすと、早瀬さんがにっこり笑っていた。



「…お久しぶりです。どうぞ」


早瀬さんに会うのはクリスマス以来だろうか…
私が空いてる方を手で少し払うと、早瀬さんは「お構いなく」と言って腰を下ろした。

相変わらずだな…なんて思いながら、再び空を見上げる。

良く晴れた空だった。



「今日はどうしたんですか?」


「あ、近くに用事が有りまして…たまたま通りかかったら目に入った物で」


「良く分かりましたね」


「仕事ですから」


「そうですか…」



それから少しだけ二人で空を見た後、世間話をしながら何気なく訊いてみた。



「彼は…どうしてますか?」


その言葉に早瀬さんは少し躊躇い、一瞬視線を落とす。
視線の先の焼けた左手には色褪せたリングが鈍く光っていた。



「噂では…好きな人が出来た。と聞きました…」


「…好きな人」



二つの言葉を掻き消すように鳩が飛び立ち、桜の花びらがハラハラと目の前を舞い降りた。

まるで雪みたいに…
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