鬼りんご
「いえ、それよりも先輩、頬から血がっ」

「ああ、こんなの平気だよ。情けない話しなんだけど、殴られることに慣れてるの」


「へ?」と同じ方向へ首をかたむける二人は、とても可愛らしい。


「この高校へ入学した日からしょっちゅう殴られるようになってね、しかも殴った相手は殴ったことを覚えてないって言い張って」

「それ、オレもだ……」


「バカ優斗!あんたねぇ!」女子生徒が優斗と呼ばれた男子生徒の頭を引っ叩いた。

この二人仲良しだな、恋人同士なのかな、など微笑ましく見ているととんでもない言葉が飛びかった。


「姉ちゃんすぐ頭叩くクセ直せって!」

「うっさい!優斗が悪いことしたからでしょーが!」


姉ちゃん?姉ちゃん?!この二人、姉弟なのか。

まさか、同じネクタイの色を締めてると言う事は。

「二人は、双子?」私の質問に、同じ目つきでうなずく様を見て納得した。


「君は優斗くんだよね、お姉さんのお名前は?」

「私ですか!私は夢子、鳥居夢子です」

「夢子ちゃんね!優斗くんに夢子ちゃんか、いいね、仲良しな双子!」

「そうでもないです。男のくせにうるさいし、寝ぐせなのか何なのか分からない髪型だし」

「関係ねぇだろ!」


思わず声を上げて笑ってしまった。

本当に微笑ましい二人だ。

大きく口を開けると殴られた頬に痛みが走ったが、そんな痛みなど無視できるほど久々に笑えた。

左目のまばたきが少しずつしづらくなるのが分かる。ああ、腫れてきたな。


「へえ、二人も双子なんだ。俺達も双子なんだよ」


突然、後ろから迫る声と、肩に伸びてきた手。
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