鬼りんご


「た、だいま……」チャイムを押したが修司は出てこなかった。カギを開け、中へと入る。

さすがの修司も怒りをあらわにしてくるだろうな、ビンタの一発ぐらいは受け入れる覚悟をした。

だが、どこを探してもいなかった。

リビング、いない。

修司の部屋、いない

台所、ベランダ、トイレ、風呂、どこにもいない。

ソファーに座り一息つくと部屋の静けさが不安をかき立たせた。

急いで携帯を取り出し着信履歴から電話をかける。


(――もしもし、桃美?)

「修司!ごめんね、今家に帰ってきた。どこにいるの?」

(そっか。ちょうど俺も家についたとこ)

「分かった」


電話を切り、玄関へ向かった。

そこには、制服のまま汗だくの修司が立っていた。

私を見ると花が咲いたように笑顔になる。

心配して探し回ってくれたのだとすぐに理解した。


「桃美!よかった、何か事件に巻き込まれたんじゃないかって心配したよ」

「ごめん!本当にごめんなさい!」

「謝ることないない。それより頬、だいぶ腫れてきたね。今夜は冷やさないと。あれ、ヒザどうしたの?!血!」

「ああ、ころんじゃって。こんなの平気!それより早く上がって、すぐにご飯作るね」
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