鬼りんご
風呂を上がった後は自室へ直行する。

風呂上りの姿を修司に見せないようにするためだ。

以前は濡れた髪、のぼせた体を露わにしたままリビングでくつろいでいたのだが。

ある日いつも通りテレビを見ながらくつろいでいると、「うまそう」小さな声が聞こえた。

修司の方を振り向くと、無表情で目を細めこちらを見ていた。

目が合うと笑顔になり、「ん、なに?」などとわざとらしい態度をとってきたのだ。

その日からリビングではくつろぐことをやめ、自室でくつろいでいる。

自室にテレビはないが、あんな目で見られるぐらいならテレビぐらいガマンできる。



ヒザの傷を手当てし、髪を乾かし、ベッドに寝ころんだ。

風呂のせいで熱が上がったのか、太ももと頬の痛みが更に増してきた。

何か冷やせる物を冷蔵庫に取りに行こうと起き上がった所で、扉がノックされる。


「桃美、入ってもいい?」

「うん、どうぞ」


手に保冷剤を持った修司が入って来た。


「寝る前に少しでも冷やしておかないと」

「ありがとう!今取りに行こうと思ってたとこだったの」


こういう所はすごく気がきく。修司が人気の理由も見えてくる。

保冷剤を受け取るべく手を出すと、その手を引かれパジャマのズボンを素早くずり下ろされた。
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