鬼りんご
修司は私の気持ちを少しも分かっていない。

いくら双子だからといえど、こんなの、誰かに見られていたらどうするの。

ただでさえ私は学校にいづらい環境なのに、変なウワサが広まったらもっといづらくなる。

その面、修司はたくさん友達がいる。

皆から頼られている、好かれている、偶然に女の子から告白されている場面を見たこともある。

誰にでも優しく、気前のいい人柄からして人気があるのは分かる、でも、痛めつけられた私を見るうっとりした目、あの目を見るたびに寒気が走る。

私が孤独に耐える姿、痛めつけられている姿を見て楽しんでいるんじゃないかと、これだけ差があるとイヤでも考えてしまう。

うつむいていると、「桃美?どうしたの、足が痛む?」そう言いながらスカートの中へ手を忍ばせ、湿布の上から足をなでてきた。

――ああ、限界だ。


「修司ごめん、先生に職員室へ来るよう言われてたの忘れてた!何か用事があるらしくて。ちょっと行ってくるね。お箸は貸してあげるから使って」

「待って、先生って誰、誰に言われたの」

「えっと、数学の大林先生」

「そっか。昼休み中はここにいるから、用が終わったら戻っておいでよ」

「あの、戻れるか分からなし、友達と食べた方がいいんじゃない?」

「待ってる」

「……戻れたら戻るよ、じゃあね」


ウソをついてしまった。

ごめんなさい大林先生、四時間目が大林先生の授業だったから顔が一番に浮かんできてしまって。

修司のいる場所から遠ざかり校舎で一番使われていない女子トイレへ走った。

手洗い場で爪の中までキレイに洗い個室へと入る。

壁にもたれながら弁当のフタを開け、食材を手でつかみ、食べた。

手で弁当を食べるなど初めての経験。やはり手を口に入れるのは少し抵抗があるな。

とはいえ、あのまま修司と食べていたら周囲に誰か来ないか、と気を張って食べることとなる。

それに比べればこちらの方が気楽でいい。

お弁当の味がよくわかる、美味しい。
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