空色ブロッサム
「…はぁ。そうやって睨んでくるのが、嫉妬からじゃないって解るから虚しいなぁ」
「当たり前でしょう?
好きでもない恋人に嫉妬する程、暇じゃないもの」
「冷たいね」
そう言って、哀しげに笑う海翔に罪悪感を覚えない訳じゃない。けれど、それを見ないフリをする。けして、嘘だらけのこの男に騙されないように。
「こんな茶番に付き合ってるんだから、約束は守ってよ」
―――わかってるでしょう?
そう年を押すように彼を射る様に見据え、今にも悲鳴を上げそうな心に蓋をして、嘘の上に嘘を重ねる。
「ほんと酷いなぁ。まぁ、でも解ってるから安心して」
穏やかな笑顔のまま、唇を寄せてくる海翔に、反射的に目を瞑った。
これも、大事な桜を守る為には必要なことなのだと、最低でしかない言い訳をして……
-椿side,end-