プレゼント



乗るはずだった電車を見送って、わたしと大樹はホームのベンチに座る。


5月といえど夜はまだ、肌寒い。


昼は暑いくらいだから薄手のジャージには春の風が冷える。



「寒い?」


「あ、ちょっと……」


「その格好だもんな……」



大樹が着ていたジャケットをわたしにかける。


ジャケットを脱いだ大樹は薄手のシャツ。



「ちょ……大丈夫だよ。大樹が寒く……」


「オレは平気だから、菜乃羽が着てろ」


「……ありがとう」



きっと、こんなこと、最初で最後だからありがたく借りておくほうがいいのかも
しれない。









< 8 / 18 >

この作品をシェア

pagetop