【ほのB】人間の本質は愛なんじゃないかな?
「あら、誠さん。お早いのね」
結い上げた髪の乱れを片手で直しながら、お袋が玄関に現れた。
「ええ、まあ、たまには」
確かに、この人は若い頃、さぞかし美しかったことだろう。
すらりと伸びた手足、豊かな黒髪。
少し中性的な面立ちのせいか、実際の歳より十は若く見える。
肌だって、シミ一つ無く張りが合って綺麗だ。
親父がぞっこんなのも頷ける。
「お母上は、いつも麗しくあられますね」
「あら、やだ、親をからかうものじゃありませんよ」
そう俺をたしなめる口調が、心なしか弾んでいるのは気のせいか。