【ほのB】人間の本質は愛なんじゃないかな?
「なんだ、誠、やけに早いな」
親父が帯を気にしながら部屋から出てきた。
着物が良く似合う二人である。
上気した頬が、二人の情事を物語っている。
爺さんが死んでも、二人の生活は変わらない。
特に自由になるわけでもなく、派手になるわけでもなく。
昔ながらのこの家で、倹しい古風な生活を送っている。
それでも、こんな二人だけの時間が増えたことが、若さの秘訣なのだろうか?
「お邪魔でしたね、すいません」
「何を言ってる、久々に飯でも一緒に食おう。
今日は店は休業だ。
美佐緒の誕生日だからな」
「あ……」
「何だ、忘れてたのか。知ってて早く帰ってきたのかと思ったぞ」
「すいません」
「いや、なに、気にするな。
家族皆揃っての食事の方がずっと価値がある」