【ほのB】人間の本質は愛なんじゃないかな?



……確かに、俺も疑ったことが無い訳じゃない。



控えめに喋る声は若干低めであったし。
親父は大柄だからさほど気にはならないが、背も女にしては高めではある。
物心ついた頃から、お袋と一緒に風呂に入った記憶はなかったし。
日中、肌を露わにしているお袋の姿を見たこともなかった。

でもそれは、日頃着物を愛用している彼女、いや彼にとってはごく普通の日常であって、昔気質のこの家にあっての慎み深い振る舞いであると、俺は俺なりに納得していたのだ。

実際、お袋は誰よりも美しかったし、物腰も柔らかく、凛とした気高さ故の孤立感が彼女、いや彼を他の母親達から遠ざけていたのも確かだと思う。

< 56 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop