【ほのB】人間の本質は愛なんじゃないかな?


今は男として生きている麗さんが、俺の本当の母親で。

静さんは、俺の生物学的叔父さんってことになる。

体外受精したのがお袋の精子だとすれば、俺の生物学上の父親はお袋で。

つまり、俺と爺さんとの血縁は絶たれる理屈だ。

法律上、俺は蜷川の爺さんの養子ってことになるなら、俺と親父やお袋は俺の兄妹ってことになる。

俺にとってお袋は、父親であり、母親であり、兄妹でもあるってことか?

いや、それは単なる可能性であって。
お袋が、俺にとって育ての母であることに疑う余地はない。

お袋が俺に常日頃言い聞かせてきた、「男らしくありなさい」という呪文。

それは、俺には、意識せずに男らしくあることが難しい生物学的素因が多く含まれている、という戒めだったのだ。

天を仰ぎ見た俺の脳裏に、次々と現れては消えて行く、再認識された真実の羅列。

俺は、その全てを在るがままに刻み込むことに専念していた。



――畜生!

訳がわからなくなってきやがった。
< 60 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop