穢れなき獣の涙
「種はいつか淘汰される。それが自然の摂理というものよ」

 薄く笑って応えるが、納得しているようには見えない。

 しかし、どんなに納得がいかなくても、目の前に横たわる事実から目を背けてはならない。

 存在している者は、生きていかなければならない。

 過去に囚われていては、己自身の存在の意味すらなくなってしまうのだから。

「前に進む力があるのならば、希望はある。客人の部屋を用意した。ゆっくり休まれるとよかろう」

「それは有り難い。何せ野宿というものは、年寄りには辛うてな」

 軽く腰を叩き、シレアを一瞥する。

「よくも言う」

 青年は呆れたようにつぶやいた。




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