穢れなき獣の涙
 この素早い対応こそが、草原のエルフは好戦的だといわれていた由縁なのかもしれない。

 元来エルフとは、おっとりしたものだと思われているせいだ。

「なんなのだ」

 初めての状況にアレサたちエルフは戸惑いを隠せない。

 そんな彼らの動揺など知ったことかと、幾つもの敵対的な赤い輝きが闇の中からこちらを睨みつけていた。

 エルフたちは、ゴブリンが群れを成して襲ってくるなどあり得ないと混乱しつつも身構える。

 その数は十匹──否、二十かそれ以上だ。

 人間よりもひとまわりほど小柄な体格で、強さもさほどではない。

 しかし、彼らは小柄なぶん素早く、集まれば脅威となる。

「すまない」

 これは私のせいかもしれない。

 ユラウスの言葉を信じていなかった訳ではないが、実感はなかった。
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