穢れなき獣の涙
「客人は中に」

「心配ない」

 静かに応えて、戦う気でいるシレアに驚く。

 エルフもゴブリンも夜目が利くため、昼間と何ら変わりなく動く事が出来るが人間はそうはいかない。

 それを知ったうえで戦おうというシレアに半ば呆れた。

「責任はそっちもちだ!」

 アレサは声を張り上げて剣を振り上げる。

 開始された戦いに夜の静けさはかき消され、怒号が響き渡った。

「なんじゃこりゃ!?」

「ユラウス! 明かりを!」

「お、おお!」

 騒ぎに起き出してきたユラウスは、驚きつつも明かりの魔法を唱えた。

 それほど難しい魔法ではなく、すぐさま唱え終わったユラウスの頭上に、まばゆい光の球が形作られた。

 ゴブリンたちは皆、その輝きに苦しみ始める。

 光球(こうきゅう)の大きさは魔法使いの熟練度による。

 ユラウスが創り出した光は、エルフの集落のほぼ全域を照らしていた。
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