穢れなき獣の涙
 とはいえドラゴンにも強さや姿はそれぞれで、人間が飼い慣らせるものから神に近い存在まで様々だ。

 ワイバーンで移動する場合、馬などは網やカゴに入れ、後ろ足で掴んで飛ぶ。

「特に意味は無いよ。ただ海路を選びたいだけだ」

「荒れ狂う海に飛び込むか」

 ユラウスは半ば呆れて肩をすくめた。

 大陸と大陸の間を流れる海流はすさまじく、経験を積んだ船乗りでさえ航海の度に命を賭けた旅路となる。

「とにかく、まずは空路を検討しようではないか。もちろん、転送屋がいればそっちじゃ!」

 そう言ってユラウスはシレアの持つ地図の港町を指し示した。

 エナスケア大陸の北には大きな港町と小さな港町が二つある。

 一つは大陸を渡る船のあるザラルカ。

 もう一つはその東に位置し、飛竜を使った渡りを生業としている港町ソルデラウス。

 シレアは二人の顔を交互に見つめ、仕方がないと溜息を吐いてユラウスの案に従いソルデラウスを目指した。





< 128 / 464 >

この作品をシェア

pagetop