穢れなき獣の涙
「ザラルカへは明日の朝、出発しよう」

 シレアたちは諦めて宿を探し始めた。




 ──宿も決まり、食事を済ませた一同は部屋で話し合う。

「敵の姿はまったくなのですか」

「うむ、未だに見えぬ。青い炎をまとった影としか」

 アレサの問いかけにユラウスは神妙に応えた。

「旅を進めればそのうち見えてくるだろう」

 しれっと言い放つ青年に二人は呆気(あっけ)にとられる。

「呑気だのう。ぬしが最も関わっているというのに」

「実感が湧かないことに不安がっても仕方がない」

 肩をすくめるシレアに、それもそうかとユラウスとアレサはなんとなく納得する。

 自分たちだって関わっている事は確実だが正直、実感は湧かない。
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