穢れなき獣の涙

 ──早朝、シレアたちは旅の準備を済ませて宿を出る。

「なんじゃと!? おぬしの夢に!?」

 歩きながら昨夜の夢を説明した。

「それでよくも平然としてられるものじゃな」

 ユラウスは、しれっと語る青年に呆れて目を丸くした。

 まさかシレアに直接、警告してくるとは、敵は本格的に動き出そうとしているのだろうか。

 港町ザラルカに向け、一同は馬を走らせる。

 空は暗く、灰色の雲が厚く敷き詰められ、旅の始まりを心重くした。

 ソルデラウスからザラルカまでは二日ほどかかる。

 一夜を平原で過ごし、昼過ぎには何事もなくザラルカに到着した。

 町を囲むように建てられた塀には船の絵が描かれ、さも港町らしい門構えがシレアたちを迎える。
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