穢れなき獣の涙
 ソルデラウスには簡単な木造の門しかなく、町の大きさの違いが見て取れた。

 門をくぐると、活気ある声が響き渡っていた。

 三人は馬から降りて手綱を引き港に向かう。

 大勢の人間を初めて見るアレサの表情には、驚きと戸惑いが混じっていた。

 港は漁から帰ってきた船と荷物を積み込む客船とがごった返し、活気というよりも騒がしい。

 シレアは、荷下ろしをしている男たちを指示している一人の男に近づく。

「ちょっといいか」

「何か用かい?」

 四十代とおぼしき男は、煩わしそうにしながらも覇気のある声で応えた。

 薄汚れた厚手の服に太い腕と、がっしりとした体格をしている。
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