穢れなき獣の涙
*真紅のドレス
出航までの三日間、シレアたちは町に滞在する事になった訳だが──
「手持ちはあるか」
シレアが二人に尋ねると無言で見合った。
「そうだろうな」
森の中で暮らしていたユラウスと、人間社会を初めて見るアレサが金を持っているとは思えない。
いや、エルフと人間は交流がまったくない訳じゃない。
おそらく、集落自体では商人たちとのやり取りはあっただろう。
金というものに馴染みはあるが、稼ぐ必要の無い彼が金を持っているとは考えられない。
シレアは溜息を吐きつつ頭を抱えた。
渡航費はある。
しかし、滞在費が足りない。
町から出て野宿も考えたが、ユラウスは必ず反対するだろう。