穢れなき獣の涙

「ここは……」

 シレアは目の前の光景に目を丸くした。

「何って、ドレスの品評会場でさ」

 リシャルと名乗った男がシレアたちを案内した先は、縦長の舞台が設置された裏手にある大きめの小屋の入り口だ。

「リシャル、見つけたの?」

 小屋から出てきた一人の女性が男を見つけて歩み寄る。

 そして、シレアを見た途端、言葉を失い凝視した。

「どうですか?」

「良い。いいわ。よくやりました」

 そう言ってリシャルに金貨二枚を手渡すと、男はそれをポケットにねじ込んだ。

 シレアは、これから自分はどうなるのかと身売りされた気分になる。

「あなた、名前は?」

「シレア」

「詳しいことは聞いている?」

「いや、何一つ」
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