穢れなき獣の涙
「あたしはメアリー、しばらくよろしくね」

 メイクをするために鏡の前に座らせたシレアに、にこりと笑いかける。

「どうすればいいのか」

「大丈夫よ。前の女性が歩いている通りに歩けばいいだけだから」

 言われて再びドレスを一瞥する。

 純白のレースが体のラインに沿うように螺旋状に縫いつけられ、男の私が着てもいいのだろうかと金緑石の瞳を白黒させた。

「みんな! 手伝って!」

 アガットが手を叩くと、手の空いた女性たちが一斉にシレアを取り囲んだ。




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