穢れなき獣の涙

 ──舞台の前にある席にユラウスとアレサは腰を掛け、品評会の開催を待っていた。

「これは、ドレスの品評会じゃよな?」

「ええ、そのはずです」

 そこから導き出される結論に、ユラウスは複雑な表情を浮かべる。

「どんな恰好か見ものじゃな」

 薄紫の瞳を前方の舞台に向けて口角を吊り上げ、テーブルに置かれた飲み物を口に含んだ。

 二人はシレアの仲間という事で、特別に間近でのショーの観覧を許可された。

 ユラウスは嬉しそうにしているが、アレサは少し不安だった。

 エルフでさえも魅入られそうな整った顔立ちと印象的な瞳──身長は低いとは言えないが、出来上がりは相当なものになるのではないだろうか?

 彼はシレアの容姿を正しく認識していた。





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