穢れなき獣の涙
「シレアはいつなのじゃ? 奴が出たらここから抜け出したいわい」

「もうすぐでしょう」

 そのとき、演奏が盛り上がれといわんばかりに音量を上げ、観客たちは舞台上を見つめた。

 満を持して現れた影に、いっそうの歓声が上がる。

 大柄だが歩く姿は美しく、妖艶を身にまとったような容貌に客席からは溜息まで漏れていた。

「おおう? なんという美しさじゃ」

「あれは」

 アレサはすぐにぴんときた。

「ええ、まあ」

「教えてくれんか?」

「目の色で解りませんか?」

 思わせぶりな発言にユラウスは眉間にしわを寄せる。

「わしも知っておるのか?」

 言われて、優雅に歩く女性をじっと見つめた。
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