穢れなき獣の涙
「四日目くらいの距離に無風帯(ドルドラム)があってな」

「ほう?」

 海のことはよく解らないが、あまりよいものではないのだろう。

 ネドリーはふと、説明を待つシレアから視線を外し、

「おっと、呼ばれてるぜ。じゃあな」と遠ざかった。

 彼の背中を見つめて、ネドリーを呼ぶ声など聞こえなかったのだがと首をかしげた。

 それにさしたる関心も無く、まあいいかと空を仰ぐ。

 大気を読み、自然の声を聞く──放浪者(アウトロー)として必要不可欠な能力だ。

 シレアはいつも、こうして空を眺めてある程度の天候や大気の流れを掴む。

 敵の匂いをかぎつける能力はエルフには敵わないにしても、渡り合えるほど彼の能力は高い。
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