穢れなき獣の涙
「まあいい」

 考えるのは好きだが、考え過ぎるのは好まない。

 遠くの波間を見やり、ひと息吐こうと船室に降りた。




 昼近く──配られた食べ物を受け取るシレアとアレサの目には、床に転がっているユラウスの姿が切なげに映し出されている。

「う……。うう……」

「なるほど、それで海路を避けたかった訳ですね」

「こればかりは、長生きしていても、どうしようなし」

 青ざめた顔でうなだれるユラウスを眺めながら、二人は硬めのブレッドを口に運んだ。

「わしの前で、食べ物なんぞ口にするな」

「甲板で風に当たってくるといい」
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