穢れなき獣の涙

 ──朝、ネドリーは上着のポケットから乳白色に輝く真珠を取り出すと、それを凪の海にぽいと放り投げた。

「これであいつらが来る」

「あいつら?」

「ちょっとしたもんで、その褒美に船を進めてくれる種族がいるのさ」

 怪訝な表情で見つめるシレアに得意げな顔を見せた。それに海をのぞき込む。

「海の種族?」

 いくつかに区分けされている海域を、それぞれに支配している種族がいることは知っている。

 しかし、彼らはあまり他の種族との関わりを持たない。

 そのため、シレアはその種族について多少、知ってはいても会ったことはない。

 想像している種族が来るのかと期待をしつつも、船長の言葉がどうにもひっかかって素直には喜べずにいた。
< 166 / 464 >

この作品をシェア

pagetop