穢れなき獣の涙
──朝、ネドリーは上着のポケットから乳白色に輝く真珠を取り出すと、それを凪の海にぽいと放り投げた。
「これであいつらが来る」
「あいつら?」
「ちょっとしたもんで、その褒美に船を進めてくれる種族がいるのさ」
怪訝な表情で見つめるシレアに得意げな顔を見せた。それに海をのぞき込む。
「海の種族?」
いくつかに区分けされている海域を、それぞれに支配している種族がいることは知っている。
しかし、彼らはあまり他の種族との関わりを持たない。
そのため、シレアはその種族について多少、知ってはいても会ったことはない。
想像している種族が来るのかと期待をしつつも、船長の言葉がどうにもひっかかって素直には喜べずにいた。