穢れなき獣の涙
 最も特徴的なのは、下半身が魚の尾というところだろう。

 この海域の人魚は鱗を持つ種類らしい。

 他の海域にはイルカのような肌だったり、マーマンは半漁人の種族もいる。

 戦士は主に男、ウィザードは女が多い。

 それだけでなく、彼らは海の生物をも操ることが出来る。

 そういう意味では、海の中で彼らに敵う者はいないだろう。

 なんにせよ、伝え語りでしか知る事のなかった種族との遭遇は旅の醍醐味だ。

「彼女たちに頼めば、船を動かしてくれるってわけさ」

 気楽に言っているが今まで黙っていたというのは怪しいにも程がある。

「まあ、少しの報酬を払わなきゃいけねえが」

「ほう」

 やっと切り出した。

「彼女たちは美しい男が好きでな。口づけを与えれば、その代償に大抵のことは引き受けてくれる」

「……ほう?」

 嫌な予感がする。
< 168 / 464 >

この作品をシェア

pagetop