穢れなき獣の涙
「失敗は次に活かせばいい」

「ごめんなさい」

 私に謝られてもと、すっかりしょげているカナンを見やる。

「落ち込んでいるところ悪いんだがね」

「はい?」

「何か焦がしているぞ」

「ああっ!? お鍋!?」

 慌てて走っていくカナンの叫び声が聞こえてシレアは眉を寄せた。

「今夜のごはん、だいじょうぶかなぁ」

「食べられればいいのよ」

 双子の言葉に、いつも何かしらの失敗をしているのかと眉間のしわを深くする。

「お部屋に案内するね」

 セシエがシレアの手を取り階段に促す。

 木造の建物は歩くたびにどこかが軽くきしみ、その古さを漂わせる。

 案内された部屋の前で立ち止まり、さして頑丈とも思えない扉を開く。

 眼前の壁には格子窓があり、外は夕闇が迫っていた。

 さらに見回すと、小さなデスクが部屋の中心に置いてあり、向かって左の壁際には整えられたベッド、その傍らにナイトテーブルと平均的な宿の一室だ。
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