穢れなき獣の涙
*お前の価値はいかほどか
──次の朝
「お前ら、しっかりやれよ!」
ドルドラムを無事に抜け、ネドリーは船員たちに声を張り上げた。
海の男よろしく、「おうさ!」と威勢の良い声が船長に返ってくる。
「やれやれ。これでギュネシアに行けるというものじゃ」
「そんなに簡単にいくのでしょうか」
細めたアメジストの瞳に、シレアは海鳥が飛ぶ向こうの空に視線を送る。
アレサが気に病むのは当然だ。
ただでさえ危険な旅に見えない敵がいるのだから、一つが済んだからといって安心はしていられない。
なまじ先詠みの能力があるせいなのか歳のせいなのか、もしくは古の種族の性格なのか。
ユラウスはやや緊張感に欠けているようにも思われた。
それについては、年の功とでも考えておく。