穢れなき獣の涙
 そうして食事を済ませた一同は、旅の準備のために市場に立ち寄る。

 価格は全体的にエナスケアよりもやや高めの印象だ。

 ほとんどをエナスケアからの輸入に頼っているせいだろう。



 ──ひと通りの食料を揃え、三人は馬にまたがり北に進路を取る。

 ごつごつとした灰色の岩が多く見られる大地と、やや肌寒さを感じる大気は、確かにここは別の大陸なのだと実感させた。

 遠くに見える森は、いつも目にしている森とはどこか違って感じられる。

 アレサは遠方にそびえる切り立った山々の連なりに薄紫の目を細め、二人の背中を追いかける。

 彼にとっては全てが新しく、驚きの風景と体験が待っている。

 かつての父がそうしたように、己もこの身で世界を知っていくのだ──



< 187 / 464 >

この作品をシェア

pagetop