穢れなき獣の涙
[ほう、これはまた珍しい一行だ]

 薄い膜が張った翼を折りたたみ、それぞれを一瞥していく。

「オスか」

「おぬしの感性が解らぬ」

 クラーケンのときといい、シレアには呆れるばかりだ。

「これは……。智の竜?」

 エルフの言葉に、ドラゴンはよくぞ気付いたと目を細める。

 智の竜とは、人語を解し知識に長け、魔法を操るドラゴンだ。

 ドラゴンとしては小さい部類に入り、彼らのほとんどが人間には友好的もしくは中立の立場をとっている。

 ドラゴンと呼ばれる種族は多種多様に富んでいる。

 翼の無いもの、知能の低いもの、神に近いもの。

 炎を吐くものや強烈な酸や毒を吐くものなどと様々だ。
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