穢れなき獣の涙
 智の竜と呼ばれたこのドラゴンは、立派な翼を持つ「空を統べる者」と呼ばれる種族である。

[汝に問う]

 初めて目にする威厳ある姿に見とれていたユラウスにドラゴンは突如、鼻先を向けて問いかけた。

[年月とはなんぞや]

「うひょ!?」

 よもや問答を求められるとは思わず、ユラウスは変な声をあげた。

「取り戻せないものだ」

 目の前の男からではなく、背後からの声に目を向ける。

 そこにいたシルヴァブロンドの人間を見やり、次にエルフに視線を移す。

[汝に問う]

 アレサは唇を引き結び構えた。
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