穢れなき獣の涙
[夢とはなんぞや]

「……夢?」

 切れ長の目を丸くして顔をしかめる。

 彼の中では、様々な言葉が渦巻いていることだろう。

 長い時間、考えているためかドラゴンが少し苛つき始めた。

「掴めぬ明日(あす)だ」

 またしても聞こえた声に顔を向ける。

「掴んだ瞬間から、それは別の名を持つ」

 ドラゴンは、続いた言葉にやや感心するように鼻息を荒くした。

 そして、今度はしっかりとシレアを見下ろす。

[汝に問う]

 輝く宝玉のごとき瞳を向け、静かに続ける。

[この世とはなんぞや]

 この問いかけには、さすがのシレアも難しいだろうとユラウスとアレサは険しい表情で見守った。

 しかし、シレアは少しも躊躇うことなく、その美しい金緑石の瞳をドラゴンの視線と合わせた。
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