穢れなき獣の涙
「許容する腕(かいな)だ」

[ほう……? 面白い]

 笑っているようにも見えるが、違っているかもしれない。

 ドラゴンはゆうるりとシレアに近づく。

 それを見る二人に、もし機嫌を損ねていれば、シレアは食い殺されるのではないだろうかと緊張が走る。

[久しいな]

「二年振りか」

 親しい友に再会したかのごとく挨拶を交わし、爪と拳を打ち合う双方に二人は目を丸くした。

「どういう事じゃ」

「知っているのか」

[ハッハッハアッ! 我と彼は友なのだ]

 ドラゴンは二人の反応に満足したのか、高らかに笑った。

「シレアも人が悪い」

「年寄りを驚かすでないわい」

 ホッと胸をなで下ろし、シレアとドラゴンに歩み寄る。
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