穢れなき獣の涙
 アレサとシレアは狩りに、ユラウスは火をおこしながらヴァラオムと二人を待つことにした。

「シレアとはどこで?」

[そうだな、あれはエナスケアの南にある平原だったか。今日のように、あやつに問答をかけたのだ]

 ヴァラオムは放浪者(アウトロー)を見つけては問いかけをしていた。

 迷惑な話だが、これは彼の楽しみでもあった。

 ドラゴンからの問いかけに、機嫌を損ねると殺されるのではないかと怯える者のなかにあって、シレアだけは冷静に答えていたという。

[こちらが戸惑うほどに落ち着いておった]

 こんな人間は初めてだと、シレアに多大な関心を寄せた。

[ほんに、不思議な人間だ]

 宙を見つめてつぶやいたヴァラオムに、確かにそうだとユラウスも心中で同意した。




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