穢れなき獣の涙
 まじまじと眺めて、腰に提げた剣から剣士なのだろうと窺える。

 しかし、あまりもの軽装に魔法もかじっているのだろうかと推測していた。

「失礼シタ。我が輩はリュオシャル。我らの守護神である偉大なドラゴン、リュオシュから名付けられタ」

 自慢であろう長い尾をゆっくりと揺らし、小さく頭を下げた。

 彼の服装は人間ほど厚着でもなく、その強靱な肌ゆえの軽装であるのだろう。

 厚着はバランスをとるための尾の邪魔にもなる。

「何モない所であルが、のんびりとされヨ」

 リュオシャルが手で先を示すと、他のリザードマンたちが馬の手綱に手をかけ厩へと連れて行く。

「小さイ集落ゆえ許されヨ」

「もてなしに感謝する」

 シレアが返すと、リュオシャルは彼を一瞥し口の端を吊り上げたように見えた。
< 209 / 464 >

この作品をシェア

pagetop