穢れなき獣の涙
──そうして、ようやく出てきた食事に一同は眉を寄せた。
「焦がしている」
「焦がしているな」
言葉にはしないものの、互いに見合ってスプーンがなかなか進まない。
野菜などを煮た鶏のスープなのだが、焦げた野菜が見事に出汁となって異様な風味を醸し出している。
「カナン~、苦いよ~」
「セシエ、もんく言わないの」
そう言ったソシエの目にはうっすらと涙がにじんでいる。
「ご、ごめんなさい」
一生懸命に焦げた部分を取り除いたけれど、スープにとけ込んだ苦みを消すことは出来なかった。
作り直すにも時間がなく謝るしかない。
「食べられない訳じゃない」
表情を変えずスープを口に運んでいるシレアに「もしや味覚音痴なのか」と疑いたくなるほど、客たちは目を丸くしていた。
「次に活かせばいい」
「は、はい」
「そうよ。気にしないで」
女性客の言葉にカナンはなんとなくホッとした。