穢れなき獣の涙
「ヤオーツェと、ガビアリアンか」

 アレサは二人をいぶかしげに見やる。

「お願いだ! このことは黙ってて。ケジャナルは悪い人じゃない」

 集落になかなか馴染めないヤオーツェは静かなこの場所で一人、いつも過ごしていた。

「二年くらい前にここを見つけたんだ」

 ケジャナルと出会ったのは本当に偶然だった。

「彼女とは?」

「半年くらいまえ」

 よもやガビアリアンが姿を現すなどと思っていなかったヤオーツェはケジャナルを見た途端、恐怖で身がすくんだ。

「子どもカ?」

 驚いた様子の彼女にヤオーツェはすぐ、抱いていた印象とはまるで違うと気がついた。

 それから二人が仲良くなるのに時間はかからなかった。

 女戦士であるケジャナルは彼に刃物の扱い方を教え、ヤオーツェは魔法の基礎を教え合っていた。

 もちろん、ケジャナルは魔法は使えなかったが、ヤオーツェの話はとても興味深く面白かった。
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