穢れなき獣の涙
 そして昨日、突然現れたバシラオからヤオーツェを守ろうと彼女は戦い、足に怪我を負い動けなくなった。

 集落に戻れと言う彼女に従ったけれど、気になって戻ってきたという訳だ。

「シレア」

 ユラウスに呼ばれて二人はその場から離れる。

「あの子じゃよ。運命の仲間は」

「そうか」

 陰りを見せた面持ちにユラウスは小さく頷いた。

「あの子はまだ若い、我らの旅路に巻き込みたくはないじゃろう」

 しかし、黙っている訳にもいかない。

 このバシラオも見えない敵からのものならば、脅威は続くことになる。

 ヤオーツェ本人には話さず、集落の長とリュオシャルにだけ告げることが得策だろう。

 ユラウスはここに来るまでにアレサにも話し、彼の意見も同じだと確認していた。

 ヤオーツェに事実を告げずに去る結果がどうなるのかは解らないが、死出の旅路を強要することも出来ない。
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