穢れなき獣の涙
「忘れてクれとも言えなイ。シかし、一歩ずつデも、歩み寄れタらと思う」

 過去の凄惨な出来事があればこそいま、このときが大切なのだと理解できる。

 リュオシャルは、静かに語ったケジャナルと、それを見つめるヤオーツェを見やる。

「そうダな。人は変われるとイうことを、身をモって知ったのダから」

 初めて目にしたヤオーツェの強い眼差しに、自分も変わらなければならないときが来たのだとケジャナルに向き直った。






 ──落ち着きを取り戻した集落に、シレアたちも安心して旅を再開することにした。

「我々はこれにて」

「うム。旅の無事を祈ル」

「そちらもな」

 これから長老とケジャナルを会わせて話し合うのだそうだ。

 やらなければならないことは山ほどある。

 大変だが、やり甲斐があるとリュオシャルは彼女を一瞥し胸を張った。
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