穢れなき獣の涙
 過酷な旅を続けることは難しい。

 リザードマンに人間の年齢は解らないものの、とうに五十は超えていたのだろう。

「彼らト共に行きたいのデしょう? 感情の赴くままに行動すルとイい」

 魔法使い(ウィザード)だった女アウトローの影響で魔法を覚えたヤオーツェだが、リザードマンのウィザードはかなり珍しい。

 彼らは身体能力からいっても戦士向きで、小難しいことは苦手だからだ。

「オイラがいなくなったら、種族同士の架け橋は?」

 詰まりながら発した言葉にリュオシャルが鼻を鳴らした。

「フン、我が輩を誰ダと思ってイる。お前が架けてくれタ橋をむざむざ壊すモのか」

 本当かなあ……。

 リュオシャルはときどき、勘違いで突っ走るところがあるんだけど。

「待ってイる。お前ガ成長し、戻ってくる日を」

 そう言ってリュオシャルに向けた瞳を見て、ヤオーツェは少し寂しくなった。

 彼女の瞳はもう自分ではなく、目の前の屈強な戦士に向けられている。
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