穢れなき獣の涙
「仕方がないのう。話すか?」

 思えば、あの騒動で長老たちにヤオーツェのことを話すのをすっかり忘れていた。

 それに気付いて説明に戻るかと思案していたところに、ヤオーツェがシレアたちを追いかけてきた。

 ついてきたのなら、本人に話すべきだろう。

「なになに?」

「実はの──」

 そのとき、大きな生物のはばたく音に一同は振り返る。

 眼前に舞い降りてきたのは、二匹のワイバーンと翼のある三人の人間だった。

「リャシュカ族? 何故こんなところに」

 アレサは眉を寄せてその様子を眺めた。

 有翼人リャシュカ族──天空大陸ウェサシスカに住む、翼を持つ長身の種族だ。

「知識の宝庫」と呼ばれる天空に浮かぶ大陸には、あらゆる英知が集められている。

 彼らは下界にはあまり降りてこない。

 浮遊大陸は北半球を主に巡っており、南半球では年に数度ほど見かける程度だ。
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