穢れなき獣の涙
──次の朝、シレアが厩(うまや)の横にある水場で顔を洗っていると、双子が嬉しそうにそれを眺めていた。
「なんだ」
「シレアってきれい」
「きれいー」
セシエに続きソシエも答えて、朝陽にきらめくシルヴァブロンドの髪をうっとりと見つめた。
言われ慣れた事なのかシレアは素知らぬ顔で厩に向かい、カルクカンの首を優しくさする。
「それ、キレイな色のおうまさんね」
セシエはクマのネックレスをいじりながら、青みがかった緑のカルクカンに少し躊躇いながら近寄った。
不思議そうに見つめる少女を一瞥し、シレアは牧草を手にしてカルクカンの口に持っていく。
美味しそうに草を食(は)む様子は、亀というより鶏やダチョウに似ている。