穢れなき獣の涙
 中央にそびえる城と、その周囲に点在する施設や街の家々は、建てられた年代を表すように様々な様式で造られている。

 白い壁で塗り固められた城の脇には、巨大な樹がさらに天を目指すように青々とした葉を茂らせている。

 点在する雑木林と、小さな森から聞こえてくる鳥の声は大陸が平穏なのだと示しているようだ。




 ──着陸する予定の場所には、幾人かの人影が見える。

 先にセルナクスが降り立ち、続いてワイバーンが地に足を付ける。

「久しいのう」

 懐かしむように、遠方に見える城に視線を向けた。

「ユラウス殿は以前、訪れたことがおありか」

 無表情にアレサが訪ねると、彼は口元を緩めてあごをさする。

「うむ。かれこれ千五百年ほど昔になるかの。あの頃と比べると、かなり変わっておるようじゃが」

 ウェサシスカがいつから空にあるのかは定かではない。
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