穢れなき獣の涙
 彼も同じく目で応え、ユラウスたちを中に促した。

「何が起ころうとも、ウェサシスカは揺るがない」

 自信に満ちた声は、踏み入れたエントランスに低く響いた。

 白い大理石の床は磨き上げられ、広い空間には多くの人々が行き交っている。

 城内には特別な書物が収められているため、それらを閲覧したい者が多く訪れている。

 高い天井に吊された大きなシャンデリアと、壁際に並べられた燭台が飾られている美しい絵画を映し出す。

 エントランス中央には、数百本の蝋燭を連ねた巨大な燭台を飾るように敷かれた、金糸の縁取りがされている四角い真紅の絨毯を照らす。

 両側に広がる、上へと続く階段には鮮やかな赤い絨毯が敷かれ、ここが特別な場所なのだと自然に理解出来た。

「二階は知識の間で、多くの書物が並べられておったか。三階は要石の間だったはずじゃ」

 城に保管されている書物はかなり古いものが多く他の施設にあるものとは違い、読むには許可が必要となっている。
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