穢れなき獣の涙
*銀の髪の青年
「やはり、ウェサシスカを避けては通れなんだか」
宿に案内される道すがら、ユラウスは小さく唸る。
地上の出来事は魔導師などを通じて評議会の人間に知らされる。
そのなかで重要なものとそうでないものとに別けられ、審議が行われる。
「先詠みって、古の民以外でもできるんだね」
「ロデュウは生まれ持った能力だが、魔導師たちは後に学ぶものだ」とアレサ。
エルフや人間のなかにも、占いといった形で表(あらわ)されるものもある。
魔導師のそれは古の民が持つ先詠みとは異なり、曖昧な部分が多く当たる率もさほど高くはない。
それでもシレアを呼び出したのは、それだけ信頼できる魔導師の導きなのだろう。
「シレア殿も予想していたのか」
「魔導師の話は聞いていたのでね」
初めて見るリャシュカ族には興味を示していたシレアが、レイノムスの言葉にはまるで驚くことはなかった。